ボクはもともとグラフィックデザイナーだった。当時、デザインに使う写真を探すときは、レンポジ(レンタルポジ)を利用することが多かった。その後、長く Web デザインに関わってきたこともあり、写真はずっと「素材として使うもの」という見方が中心にあった。
どんな写真なら内容を伝えられるか。レイアウトに収まるか。文字を載せられるか。写真を見るときには、使う側としての判断が自然に働いていた。
そのボクが今は写真を撮り、Unsplash で無料の素材として公開している。以前は誰かが撮った写真を使っていたのに、今は自分が撮った写真を誰かが使っている。この変化を、面白く感じている。
ウケる写真を撮ろうとするのではなく、自分が好きで撮った写真を、多くの人に使ってもらいたい。この活動で一番大切にしているのは、その思いだ。
ビデオ会議のカメラから、街を撮るカメラへ
写真を撮り始めたきっかけは、ビデオ会議だった。コロナ禍でオンラインの会議が増え、カメラを使うようになった。せっかくカメラがあるなら、自分でも写真を撮ってみよう。そんな流れで、2021年ごろから街に出て、ストリートフォトを撮り始めた。
街を歩くと、建物の直線や繰り返すパターン、光と影、人と風景の関係に目が留まる。そうしたものを、自分の構図で切り取るようになった。写真を素材として選ぶときには、その先に用途がある。自分で撮るときは、まず目の前の風景に惹かれる。撮っておきたいと思う。その感覚が、写真を撮る出発点になっている。今使っている機材は、こちらにまとめている。
旧友に勧められて始めた Unsplash
Unsplash への投稿を勧めてくれたのは、旧友の @cipher さんだった。彼自身、Unsplash で億単位のビューを獲得しているフォトグラファーでもある。
その勧めをきっかけに、2025年末ごろに写真を公開し始めた。そこから多くの人に写真を見てもらえるようになった。
自分が撮ってきた写真に、これだけの反応があるとは思っていなかった。どんな写真が見られ、使ってもらえるのかを知ることも、活動の楽しみになった。
ここで公開している写真は、無料で使ってもらうためのものだ。ボクが写真を販売したり、ダウンロードごとに料金を受け取ったりする活動ではない。お金を得ることを目的に始めたわけでもない。自分の好きな写真が、誰かの制作に役立つ。その接点が生まれることに、公開する意味を感じている。
海外の写真のようで、東京の風景でもある
なぜボクの写真が Unsplash で見られているのか。もしかすると、勧めてくれたこもりさんが一番よく分かっているのかもしれない。自分では、どこか「海外風」に見えることが理由のひとつなのではないかと思っている。
ボクは海外の写真家の作品をたくさん見ている。その影響は、構図や光の捉え方、色、被写体との距離感に、自然と表れているのだろう。一方で、撮っているのは東京や日本の街だ。建物や看板、道のつくり、人のいる風景には、その土地の文化が滲む。
海外の写真を思わせる見え方の中に、東京や日本らしさがある。その組み合わせが、誰かの目に留まっているのかもしれない。これは統計から確かめられることではなく、写真を撮り、反応を見てきた中での、今のボクなりの解釈だ。
ドキュメンタリーとファインアートの間で
撮影を続けるうちに、自分の写真が、目の前の出来事や風景を記録するドキュメンタリーと、美的な表現を重視するファインアートの間で揺れ動いていることにも気づいた。この感覚を考えるうえで、一番しっくり来たのが、ボクが敬愛するアーティスト、Faizal Westcott の説明だった。
彼の動画「When You Have No Photography Style」では、ストリートフォトのアプローチを、大きくドキュメンタリーと、美的な表現を重視する Fine Art の両端を持つ軸として捉えている。自身も両方の撮り方が好きで、その間にいると語っている。

“I’m not stuck in the middle. I’m in the middle because that’s where I’m at in my journey.”
Faizal Westcott
ボクはこの言葉を、「中間で行き詰まっているのではなく、自分の道のりの今の地点がそこにある」と受け取った。自分の写真をどちらか一方に決めなくてもいい。両方に惹かれながら撮っている今の状態にも、自然に向き合える気がした。
その場所にあったものや、人の姿を、そのまま残したいこともある。光や影、色、かたちを使って、風景を抽象的に見せたいこともある。同じ街を撮っていても、どちらに惹かれるかで写真は変わる。
その中で、Unsplash の素材としての反応を見ると、ボクの感覚では、被写体や状況が分かりやすい写真に強い反応がある。何が写っているかが伝わり、使う場面を想像しやすいことが、素材として選ばれる理由のひとつなのだと思う。
ボクの写真は、原則としてミニマルでシンプルだ。画面に入れる要素を絞っているぶん、何を見せたいかがはっきりする。Unsplash で反応がある写真と、そうでもない写真の差も、比較的見えやすい。
ただ、その反応と、自分が作品として気に入っているかどうかは、必ずしも一致しない。使われやすさを知ることは面白いけれど、撮るときに大切にしたいのは、自分がその風景をどう見たかということだ。
3つの方向性を、ZINE にまとめる
こうした違いを見つめる過程で、自分の撮る写真には大きく3つの方向性があると分かってきた。その整理は、PERCEPTION、ELEMENT、ARCHITECTURE という3冊の ZINE としてもまとめた。
PERCEPTION は、光、反射、影を通して変わる風景の見え方。ELEMENT は、大きな空間の中にいる人と、距離やスケールの関係。ARCHITECTURE は、建築の曲線や反復、光と影の幾何学。
写真を一枚ずつ公開することと、選び、並べ、一冊にまとめることでは、見えてくるものが違う。写真を公開し、反応を見て、もう一度自分の写真を見返すことが、作品づくりにもつながっている。
使う側から、つくる側へ
以前、グラフィックや Web のデザインで探していた素材を、今は自分がつくっている。写真を撮り始めたときには、あまり意識していなかったことだ。でも、Unsplash での活動を通じて、これまでのデザインの仕事と、今の写真活動がつながってきた。
使う側として写真を見てきた経験は、撮るときにも、公開する写真を選ぶときにも、どこかで働いているのかもしれない。余白や構図をどう扱うか。何を入れ、何を省くか。自分の写真のシンプルさにも、その経験が表れている気がする。
実際に、Figma や Notion などでの利用も確認している。自分が街で撮った写真が、誰かのデザインやドキュメントの中に入っていく。そう考えると、写真を公開する楽しさがまた少し広がる。
Unsplash の bookslope の写真を見て、気に入ったものがあれば、ぜひ使ってみてほしい。Unsplash で「bookslope」と検索しても見つけられます。利用にあたっては、Unsplash のライセンスを確認してください。
好きで撮った写真が、誰かに届く
今は、目標にしている2,000万ビューと20万ダウンロードが、もうすぐ手の届くところまで来ている。数字が増えていくのは嬉しいし、自分の写真が届いたことを感じられる節目として、楽しみにしている。
その数字の手前には、いつも自分が撮りたいと思った風景がある。これからも街を歩き、好きな光やかたち、瞬間を見つけて撮っていきたい。そして、そうして撮った写真を、多くの人に使ってもらえたら嬉しい。自分の好きな写真が、誰かの表現や制作につながっていくことを望んでいる。
素材として写真を見てきたボクが、写真を撮るようになり、それがまた誰かの素材になっている。Unsplash を通じて生まれたこの循環を、これからも続けていきたい。





