KAOSPILOT Creative Leadership Workshop in Tokyo

2017年4月21日と22日の2日間、日本で第2回目となる KAOSPILOT クリエイティブリーダーシップの特別ワークショップ (モジュール1) に参加してきました。

KAOSPILOT とは

KAOSPILOT (カオスパイロット) とは、デンマークにあるビジネス・デザインスクールのことで、世界的に評価されている学校です。以前から、大本 綾さんの記事や講演を聞きかじりしていましたので、そのメソッドや取り組みにはたいへん興味がありました。

今回は、その学校で教えている「クリエイティブリーダーシップ」プログラムを日本で受講できるという点と、その学校の校長である Christer Windeløv-Lidzélius 氏とプログラムディレクターの David Storkholm 氏が来日して直接お話しが聞ける点、そして「百聞は一見に如かず」ということで参加するに至りました。

募集が告知されてから非常に楽しみにしていた反面、本当に参加する価値があるのかずっと疑心暗鬼でした。しかし、終わってみての感想はまったく違っていました。どんなことをしたのか思い出しながら書いてみようと思います。

チェックイン

会場に着くと座席が円になっていることがわかります。全員の顔が見えること・講師含めて並んでいるフラットな関係であることがわかります。

はじめに「チェックイン(この機会に参加する意思と宣誓のようなもの)」を参加者全員でします。これにより、このコミュニティに自分が参加することを全員に知ってもらうこと、また認めてもらったことを自覚します。

2つのリーダー像

KAOSPILOT での取り組みやその考え方を聞きました。中でも印象的だったのが「(コミュニティの)リーダーには2つの側面がある」というものでした。簡単に言うと、中身を見るリーダー「Leaders PARTICLES」と空間を見るリーダー「Leaders SPACE」の違いです。

Leaders PARTICLES/中身を見るリーダー

  • Content/コンテンツ
  • Information/情報
  • Being Instructional/インストラクションを得る
  • Outcome/成果

Leaders SPACE/空間を見るリーダー

  • Context/コンテクスト
  • Communication/コミュニケーション
  • Being Inspirational/インスピレーションを得る
  • Next Step/次のステップ

そして、その役割には、信頼・集中・モチベーション・コミュニケーションをサポートするものだということが明確に述べられていました。コミュニティにおける「信頼」をはじめに置いた解釈は、ボクにとっては新鮮でした。

手元を見ないで描く似顔絵

手元を見ないで相手の似顔絵を書くというワークがありました。「アイスブレイク※」としてだったと思いますが、自然と笑みが溢れる点で楽しめました。イラストはどうしても上手く描こうと誰もが思ってしまうものだと思いますが、この方法だとどうやっても上手く描けません。

中には人間の顔とは思えないものもあったわけですが、手元を見ないというルールなので、誰も絵の上手さを気に留めません。今から思えばこの時点で、信頼が作り始められていることに気づきます。

※アイスブレイクとは、初対面の人同士が出会う時、その緊張をときほぐすための手法。

LEGO を使ったグループワーク

グループワークでは LEGO (レゴ) を使ったワークをしました。1日目の山場だったといえます。一切言葉を発してはいけないこと、一人ひとり別のルールがありそれを明かしてはいけないことなどを条件に、静かにレゴを組み立てていきました。最終的にはうまく組み上げられたわけですが、そこに至るにはいくつかの理由がありました。

  • あいづちを打つこと
  • ジェスチャを交えたこと
  • 順番を待つ、ゆずったりしたこと

途中で、個別のルールはお互いにコンフリクトしないことが伝えられたので、お互いを信じることができました。それによりお互いを「待つこと」ができたのが成功の要因だったように思います。手元に集中しすぎず1つタスクを進めれば、顔を上げまわりを見渡す。「作っては壊す」という順番の如く、まず作りはじめないと次に続かないこともよくわかりました。

リスニングの3レベル

リスイングには3つレベルあり、過去に起きたことを自分の記憶に関連づけて聞くこと・自分の考えを含めないで今起きていることを素直に聞く・まだ起きていないことや言語化されていないことを聞く、というのに分かれるそうです。聞くことというのは「状況について」と「価値について」に分かれます。そして、相手がまだ言語化できていないことを聞き出す「パワフル・クエスチョン」について教わりました。

  1. Internal listenning/過去に起きたことを聞く「MIRROR」
  2. Focused listenning/今起きていることを聞く「TUBE」
  3. Global listenning/まだ起きていないことを聞く「ANTENNA」

これらのリスニングを用いてグループワークを行いました。パワフル・クエスチョン「自分の人生において何をもっとも尊重しているか」について、人生相談ともとれるようなディスカッションをすることができました。

チェックアウト

1日目の終わりに、今回の感想というか気づきを共有するチェックアウトを行いました。はじめにしたチェックインと同様に、円陣で全員の顔が見える状態でしました。

聞くこと」の大切さ、その根底にある「信頼」、そしてそれをどう実践するか「問いの技術」、そのすべてを1日目で学んだと言えます。

クリエイティブ “AIKIDO”

2日目は「コミュニケーション」がテーマでした。その中で「Creative “AIKIDO”」と称したメソッドがたいへん興味深かったです。合気道(相手の力を利用して制す)ということは、物事の考え方にも適用できるということですね。

  • Accept the force/許容する
  • Integrate the force/受け入れる
  • Build on the force/力に変える
  • Offer it back/提供する

相手の意図(意思)を受け入れることから始まります。パントマイムジェスチャでウォーミングアップをしたあとに、相手の話を聞いて次のストーリーを考えるといったワークがありました。この中で「Mind the Gap」についても学びました。

話をもう一度やり直す「New Shot」や、次の話し手に代わる「Shift」という言葉を使い、ペアでストーリーを作っていきます。相手がどう考えているのか、次はどういう展開だと面白いのか、なかなか高度でしたがライブ感があって、とても楽しめました。

ピクシー絵本の創作

デンマークの絵本「Pixie Book」をグループワークで創作するというワークが今回の一番の山場となります。テーマは「リーダーシップ」。絵本を作ることで、チームワークが試されるわけですが、2日間を通して学んだことをすべて活用して取り組むワークになったと思います。

グループ分けはランダムに選ばれたわけですが、奇遇にもIDEOの石川さんやGaji-Laboの山岸さんたちと同じグループでとてもエキサイティングに取り掛かることができました。話せば長くなるので、グループ内でしたいくつかの工夫をトピックとして整理してみます。

  • チェックイン(宣誓)し、お互いがしたい進め方や手法を共有した
  • 散歩に出て、お互いの考え(リーダーシップについて)を共有した
  • 途中でユーザー評価を取り入れた(運営スタッフに意見を聞いた)

リーダーの2人(NTTの草野さん・P&Gの今泉さん)がうまくコントロールしてもらったおかげでスムーズに進めることができました。はじめからガチガチに決めなかったこともあり、キャラクタやストーリーの骨子が決まってからは加速度的に仕上げに入ることができました。最後の仕上がりにはグループ全員が満足しかつ感動することができました。

今回、ボクたちが創作した絵本は「海辺のトロビー」といいます。思いのほかグループ全員の想いも強かったので、実際に絵本を作ってみようという意見まであがっています (笑)。機会があればどこかで開発秘話など含めお話しできればと思います。

Team "TOROBII" Presentation
Team “TOROBII” Presentation

コミットメント

プログラムも終わり、最後は修了証の授与と引き換えに(クリエイティブ・リーダーとしての)コミットメントを表明する儀式がありました。ボクのコミットメントは「クリエイティブ・リーダーとして、顔を上げて周りを見るようにすること」としました。

考えることや悩むことも多い昨今、自分の手元だけで考えがちですが、顔を上げ周りを見渡して何事も進めていければと思います。

まとめ

はじめ疑心暗鬼だったわけですが、終わってみての感想は「参加して本当によかった」です。なぜそう感じたのか、自分でも整理してみようと思います。ポイントは大きく2つあると思います。

  • 見ていた範囲が違った(手法ではなく哲学だった)
  • 見ていたレイヤーが異なった(デザインではなく人間だった)

まず、見ていた範囲が違ったことがあげられます。はじめは自分でもしているワークショップやファシリテーション、また Service Design Splints を勉強していた背景から、それらとどれほど違うのかという視点(穿った見方)だったことがあげられます。まったくもって狭い範囲でしか考えられていない自分だったことがわかります (笑)。実態は、この投稿で何度も書いている「信頼に基づくところからの出発」にありました。

次に、レイヤーが異なっていたということも言えると思います。どうしてもデザインという視座を持ってしまっていることが原因だと思いますが、今回学んだことはデザイン云々という目に見えるカタチというよりも「人間(関係)」に焦点をあてたものだったと言えます。

最後に「リーダーシップ」とは何でしょうか。ボクははじめ「指揮する・率いる・統率する」イメージで凝り固まっていましたが、今回学んだ結果、リーダーシップとは「信頼という場作りの構築」に置き換わりました。自分でも驚く結果です。そしてこれはなかなか伝えることが難しい。

皆さんにとって「リーダーシップ」とは何でしょうか。

Image by KAOSPILOT Creative Leadership Workshop

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