スウェーデンのスタートアップ「Uniti」の開発したEV(電気自動車)が素敵だ。
クラウドファンディングで7000万ユーロ(90億円)を集めたこのEV「Uniti One」はプレオーダーがすでに開始されています。その生い立ちというかこれまでの開発過程を辿るだけでもたいへん興味深い。
その外観は、ステンレスのようなシルバーで、大きなカーブを持つ卵型だ。2人乗りのこのEVは、150~300kmの航続が可能とのことです。価格は14,900ユーロ(190万円)を予定しており、2019年から納車が開始する予定らしい。すべてがシンプルに仕上がっていて見ててとても心地良いプロダクトです。
第一に、コンパクトカー(小型車)であること。一見、コミュート(通勤者)向け商品にも見えるんですが、コンセプトムービーを見る限りあまりそうは思えない。あくまで〈日常における足〉としての用途に見えます。
コンパクトカーの利点については、根津孝太著『カーデザインは未来を描く』に詳しく書かれているのでここでは割愛しますが、おおよそ以下のようなことが書かれています。まさにこの姿を体現したEVと見ることができます。
・日常のちょっとした用途のために、軽自動車は少々オーバースペックである
・小さくて軽いことで、子供やお年寄りが安心して歩くことができる街づくりができる
ステアリングの未来
コンセプトムービーの中に、ドアロック解除をカードでしているシーンが出てくるんですが、スマホでよかったのでは、と思ってしまいます。そこまで強調することでもない気がするのだが。最近では、タイムズのシェアカーでもしているので新鮮味は少ないです。
個人的に一番関心を持って見たのがステアリング(ハンドル)です。はじめのコンセプトムービーにはチラッと出てくるのですが、コンセプトカーなどによく見られるいわゆる四角いハンドルが装備されていました。親指が触れる付近にはスイッチがあります。また、メータークラスターは目の高さに帯状のセグメントディスプレイが装備され、ちゃっかりインフォテインメントも右手奥にあるようです。
それに対して、Web Summit でのプレゼンテーションでは、ジョイスティック状の操作ボタンと、目の前にタブレットを置いているスタイルを披露していました。このジョイスティックは、左右どちらのスティックで操作しても左右が連動して動くため、片手でも簡単に操作できるらしい。ちょうど親指のボタンは、コンセプトムービーのものから変わっていないようです。
タブレットという選択
真ん中にタブレットがあります。このプレゼンでは基本的にナビが映っているようですが、画面下部にメニューがあるので従来のインフォテインメントにあたるコンテンツを持つイメージでしょうか。
とくに外観から受けるイメージが強いですが、せっかくシンプルに美しく仕上がったと思ったのに、目の前にデカデカとふつうにタブレットが積まれている現状を見ると、もう少し違う方法がなかったものかとガッカリしてしまいます。
資金の問題だったのでしょうか? どこでその方向にシフトしたのでしょうか。ジョイスティックでの操作は未来的でまだよかったのかも知れませんが、この卵型の外観には全く合わない四角い板状のものが目の前に積んでいるなんて…。
インフラとセット販売
このコンパクトカー、日本でもニーズはあるのでしょうか。
どうしても「所有」という観点で見ると、厳しい現状があると思います。このクルマのサイズは1人用に適していると言えますが、このサイズ固有の駐車スペースは存在しません。つまり、あらゆる場所へ行けても、あらゆる場所に停められないという現実が待っていると思うのです。
したがって、駐車スペースや充電スタンドと合わせてインフラ面からも増強していく必要があり、それはEVメーカーの宿命でもあると思うのです。中国の「Tesla」と呼ばれる「NIO」も然り、個人向け直販店舗の数やスタンドの数を順次増強していっています。
なので、こうしたコンパクトEVは、独自でのインフラ増強が難しいこともあり、公共機関としてのレンタカーや、サービスと抱き合わせたサブスクリプション・モデルで提供するシェアカーのほうが無難だろうと思います。
Image by Uniti One