行政関連のお仕事というのは基本的に少ないのですが、OpenUMプロジェクト関連で行政関連の情報を調べることがあります。とくにデザインという視点で行政関連サイトを見ることは皆無なのですが、その中で英国政府のサイト「GOV.UK」にはたいへん関心があります。
GOV.UK のデザインについては、ビフォー・アフターを見てもらえれば一目瞭然です。GDS のデザイナー Ben Terrett 氏のインタビュー記事 (英文) 「An interview with Ben Terrett about the Government’s digital design principles」が参考になりますね。
デザイン変更前
デザイン変更後
また、GOV.UK は、4月に同国の「デザイン・ミュージアム」が開催している「Designs of the Year 2013」を受賞しています。公開して2年後にデザインで受賞するなんて行政関連では非常に珍しいのではないのでしょうか。すばらしいですね。
このサイトをデザインしたのは、内閣府らしく (つまり内製?)「Government Digital Service (GDS)」という名称で、政府のデジタル戦略を一手に担っている組織のようです。
by Ben Terrett
この GDS が GOV.UK のデザイン原則「Design Principles」をまとめたサイトも秀逸です。当初策定した7つの原則から3つ追加されて、10箇条になっていました。直訳になりますが訳しておきます。
Government Digital Service – Design Principles
Last updated 2 July 2012
- ニーズからはじめること
- コアに集中すること
- データを使ってデザインすること
- シンプルにするために一生懸命になること
- スモールスタートで反復を繰り返すこと
- 誰もが使えるよう構築すること
- 文脈を理解すること
- ウェブサイトではなく、デジタルサービスを構築すること
- 同じものではなく、一貫性を持たせること
- 物事をオープンにすること、それが世の中をよくすることにつながること
今年の「IA Summit 2013」でもこの話題がセッションにあったそうで「Revolutionising GOV.UK – Paul Annett at IA Summit 2013」というタイトルで GDS クリエイティブ・リードである Paul Annett 氏のプレゼンテーションスライドが Slideshare で公開されています。
構築内容に関する日本語の記事はあまり公開されていないのですが、「英国政府における統合ウェブサイト(Gov.uk)の構築 - IAIS」という研究報告があったので引用しておきます。
英国政府は、10月17日にGov.ukを正式に立ち上げ、10省庁のサイトの41,000ページを単一のウェブサイトに統合した。これまでBeta版として1月31日からDirectgovとBusiness Linkと言う2つのドメインに集約していたものを更に統合したのである。
というなかなか恐ろしいプロジェクトだったようですが、以下の取り組みをしたことでも評価が高いとのこと。
- 2万人を超えるDirectgovとBusiness Linkユーザーからのオンラインアンケートを活用し、Gov.ukのベンチマークを策定した。
- 2011/7から様々なユーザー(ビジネス、高齢者、若年層、障がい者や英語が母国語でない人々など)を対象とした、対面式のユーザーテストを11回実施した。
- 3,000ものユーザートランザクションをテストしており、これは今でも継続してテストされている。
こうした取り組みがあると、オバマ大統領の戦略「デジタル政府に関連する覚書」からも見れるように、行政関連でも取り組み方によってはこれまでと大きく変わる舵取りができるようにも思えます。みなさんはどう思われますか?