2017年6月24日に、京都で『文化としてのUX』イベントを開催しました。書籍『UX x Biz Book』のスピンアウトセミナーということで、共著者のインフォバーン京都オフィスの井登さんと登壇させていただきました。奇しくもメンバーズの原さんやエクスペリエンスの橘さんまでお越しいただき特別な一日になりました。
会場となった「京都月と」は、もともとクライアントだった方がオーナーとなりリノベーションをした建物で、古き良き日本を思わせる京町家(京都左京区)にあります。そのオーナーと親しかったメンバーズの山藤さんが司会で、着付師の瑞香さんのコーディネートで、運営者全員が着物姿という異色のイベントとなりました。
デザイン意識の欠如
ボクのほうからは「デザイン意識の欠如」というお話しをしました。デザインに関わる範囲において、チームやクライアントなどとのコミュニケーション上よくある「意識の違い」にフォーカスをあて、漠然とした「文化」について自らの解釈を含めてお話しました。
「文化」と聞くと漠然としたイメージだけが先行してしまい、勝手に作られるものみたいな印象があるのですが、本当にそうなのでしょうか。自分の近いところに「文化」を分解してみると「個人の意思」やその背景や価値観といったことに置き換わると思います。
- 文化は表層的であり、掴みどころのないもののように感じる
- 文化とは、行動の前提であり個人の潜在的な意思に値する
- 背景(文脈)の違いによる、意思疎通の難しさをギャップに例える
- 「ギャップしりとり(ジェスチャーパス)」で、他人とのコミュニケーションを体験
- 個人の意思を「発信・提案/有志・連携/コミュニティ」をもって育む
- 「クリエイティブ合気道」により、許容する・受け入れる・力に変える・提供する
- 文化とは人の意思であり「愛」が含まれている
良質なUXって一体なんなんだ?
インフォバーン京都オフィスの井登友一さんからは「UXの価値・意味・人間中心主義からの脱却による価値の捉え方」というセッションをしていただきました。その中でもっとも興味深かったのが、書籍『闘争としてのサービスデザイン』にある、顧客と提供者とのポジショニングが上下ではなく対等にしていくことが重要だという話がありました。
また、京都大学の川上先生により研究されている「不便益」についても教えていただきました。効率化だけがいい体験ではなく、あえて不便にする(手間をかける)ことで生じる体験を、新しい価値として捉え直す視点がとても興味深かかったです。
- 「UX」とはユーザーの体験を「どうすることか?」
- 心地よい効率化だけが、いい体験ではない
- 「不便益」のように、あえて非合理なところに新しい価値がある
- 「闘争としてのサービスデザイン」により、提供者と受け手の位置関係
- 主客が一体化するところに、デザインはある
- モード→ファッション→平服→礼服といったサイクルがアパレルにはある
- 価値は、習慣化されていくところにあり、サステナブルを目指すもの
- 三方よし(売り手よし・買い手よし・世間よし)の近江商人の精神
メロディーにおける文化の変遷
京都といえば、Webライダーの松尾茂起さんということで、急遽ライトニングトークをお願いしました。貴船神社のテーマ曲『時雫(ときしずく)』まで作ってしまうミュージシャン松尾さんからは「メロディーにおける文化の変遷」をお話しいただきました。
最も印象に残っているのが「音楽→音学」になっているということ。よいメロディーにはパターンがあるが、メロディーではなくリズムやビートに置き換わってきていることで、よいメロディーに触れる機会が少なくなったということ。それを踏まえて、最後に『You X 坂本』という演奏をしていただきました。
- 「よいメロディー枯渇問題」にみる、よいメロディーのパターン解説
- 「蛍の光」や「Amazing Grace」などの「ヨナヌキ音階(4・7抜き音階)」
- 調和がとれたもの = 五の謎(五感、五芒星、陰陽五行説、指、顔の穴)
- メロディーではなくリズムやビートが主流になってきている
- 調和のとれたよいメロディーに触れる機会が少なくなった
トークセッション&質疑応答
同じく共著者のメンバーズ川田さんのほうから、セッション中に気になったキーワードを振り返り、参加者の皆さんとでディスカッションをしました。その中で「作り手もユーザーとして考えることは理解できるが、自分とペルソナとの乖離をどう埋めるのか?」という質問がありました。
自分の経験でもこの〈ペルソナなりきり問題〉は、賛否両論あるんですが、とにかくもこういう質問になる場合はたいていデータがない場合が多いので、まずは自分で調べに行くことや、まずは人に聞いてみることをやってみては、という話をしました。100%を考えると身動きがとれなくなるので、とにかく自分以外の話を聞くこと、そこをまず「適当にやってみる」というところから考えてみては、という話をしました。
皆が皆、潤沢な予算の中でリサーチをしているのではなく、予算がない中でも必要だと感じたら自分勝手に(ある意味適当に)動くことで、事実を知り仮説が立てられる素地ができあがるのだと思います。
ライブ配信番組「24 #ニジュウヨン」
懇親会の途中にライブ配信した番組「坂本貴史の『24』第二打 – 2017年6月24日 放送」でもイベントの振り返りをちょこっとだけしています。こちらは Youtube にアーカイブ化されていますのでご覧ください。
着物コーデ
今回のイベントでは、奥ゆかしい京町家の「京都月と」での開催に合わせて、運営者ほぼ全員が着物姿という異例の企画となりました。この着物コーディネートは、会社の後輩で愛弟子にあたる瑞香(淺田瑞子)さんが着付けたもので、ボクと井登さんの着物のセレクトから着付けまで全部していただきました。
写真を見るとよくわかるのですが、ボクはカジュアルな色あせたデニム生地で「浪人」、井登さんは白シャツとコーディネートした「文豪」という雰囲気です。それぞれのタイプを見事に表現していただき、実際に着てとても気に入りました。ちなみに、司会をしていただいた山藤さんは「噺家」といった雰囲気でしたので、まさに三者三様という感じです。
現在は、着付け教室「タマニワきもの」をしているとのことで、もしこの機会に着物に興味を持っていただけたらぜひ着付けを体験してみてはいかがでしょうか?
ちなみに、今回衣装協力していただいた男性着物は「男の着物 藤木屋」からご提供(レンタル)いただいたものだそうです。
最後に、運営メンバー全員で記念写真を撮りましたとさ。
左奥から、川田氏、自分、脇さん、井登氏、山藤氏、前列右から、着付師の瑞香さん、京町家作事組の森珠恵さん、亭主の山内マヤコさん
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Add Yours →[…] Lessons on Netyear as IA/UX Designer ・24 Live Streaming ・UX as Culture in Kyoto ・AI Thinking #entermina ・Okinawa Creator’s Holiday Vol.1 #OCSH ・Global Accessibility […]
[…] 彼女は元同僚ですが、5年前から地元で着付けをしています。3年前に京都であったイベントでデニムの着物を選定していただいたことをキッカケに、当時の『24』の衣装にさせてもらっています。今回は、オンライン着付けにチャレンジし、帯の結び方『貝の口(帯結び)』を教わりました。彼女の転職の背景から、強みの再発見などを改めて聞くことができました。朝早くからありがとう。 […]