住箱 JYUBAKO
住箱 JYUBAKO

建築家の隈研吾さんがデザインしたモバイルハウス「住箱 JYUBAKO」をご存知だろうか。燕三条にあるアウトドアの総合メーカー Snow Peak とのコラボで実現した新しいライフスタイルの提案です。ベニヤ板のパネルを組み合わせてできたトレーラーハウスといえばイメージが伝わるでしょうか。

移動する住まい

「日本人の住まいに、移動を取り戻したい」というメッセージは非常に力強いです。現在ボクは自動車メーカーにいて、最近よく聞く「モビリティ」という言葉を捉えきれずにいたのでこのコンセプトはかなり刺激的です。そもそも、車は〈移動するモノ〉という印象が強いと思いますが、住まいは〈移動するモノ〉という印象は持てない。むしろ〈移動しないモノ〉という印象のほうが強いです。

考えてみると、屋形船は座敷でくつろげることを目的にしていますし、航空機のファーストクラスも同様です。これらを移動する前提で空間を考えるのか、空間を前提として移動することを考えるのかで大きく捉え方が異なります。

また、空間としての考え方も興味深いです。このサイトにも書かれていますが、戦国時代の茶室にインスピレーションを得ているようです。外との境界線をなくし自然に溶け込むよう、窓から見える風景を額縁に入れた絵画のように見えるよう、そのほかはなにも置かずにシンプルな装いです。

外の風景が見える窓
外の風景が見える窓

移動するキャビン

新しいモビリティのコンセプトが次々に発表される CES 2019 #ces2019 を見ていると、そうした移動するモノの見方が変わってきます。

Mercedes Benz#VisionUrbanetic というコンセプトで未来のモビリティを提案しています。個人が使う場合や企業が使う場合など、さまざまな用途に応じて交換可能なモジュールで構成されています。上下が分離する構造で、複数人を運ぶトラックの役割になる場合にはそのトラック用のモジュールを、運搬業向けには運搬用モジュールを交換することで対応します。

また、このキャビンの中を見てみると、クルマの内側を向いて座っているため、ある人は後ろ向きに乗っていることがわかります。これは進行方向を見なくてもいい電車のボックス席と同じ感覚ですね。自動運転技術が発達していくと、進行方向を向かなくてもいい乗り物になるのかも知れません。

同じように、上下分離構造を採用した Panasonic の小型電動コンセプトカー「SPACe_C」も、さまざまなモビリティニーズに対応することを意図しています。上部は人やモノを運ぶスペース(キャビン)にしているようでボディ載せ替え可能と書かれていますが、はたしてそのニーズはあるのかは微妙です。CES 2019 では、子供の送り迎えのトラックを想定していることもあり、このデザインのようですね。

Panasonic SPACe_C
Panasonic SPACe_C

このように、キャビンという考え方で上下を切り離して見ていくと興味深いです。人を運ぶのかモノを運ぶのかによって上部を交換するものと、路面状況や走行場所に応じて下部を交換するものとがあります。物理的に交換することで、かえって手間がかかりそうな雰囲気がありますが、さまざまなニーズに応じようとしている姿勢が、これからのモビリティの未来を物語っているように思えます。

上下分離構造においての下部に注目を集めたのが、韓国の Hyundai が公表した「Elevate (エレヴェイト)」です。Ultimate Mobility Vehicle (UMV) と呼ぶ未来のマシン。まだコンセプト段階らしいのですが、タイヤの代わりに4本脚が生えています。そのため、タイヤの走行が難しい場所(建物の倒壊現場など)でも移動することができます。

ロボティクス

とくに、災害時において活躍するレスキューロボ開発は進んでいて、イタリアの災害救助ロボ「Centauro (チェンタウロ)」は4本脚 + 2本腕でまるでケンタウロスのような姿をしています。日本でも1995年の阪神大震災を境に、レスキューロボ(防災ロボ)の開発が進んでいて、災害対策ロボット「Quince」などがあります。これはキャタピラなので、Centauro と合体するとまさに「ガンタンク」を想像してしまいます (汗)。

また、Boston Dynamics のロボット開発では、二足歩行ができるヒューマノイド「Atlas」が開発されており、バク宙や三段跳び、この動画では丸太を飛び越えるシーンまであります。また四足歩行ができる犬型ロボット「SpotMini」も障害物を自ら察知して迂回できたりします。※2018年から量産が開始されています。

走行が困難な場所、そもそも立ち入れない場合にはドローンの活用も最近では増えてきたようです。

空飛ぶクルマ

そのドローンに人が乗れるようにしたのが、Uber のタクシードローン「Uber AIR」です。2023年にはサービスインする計画のようですが、空のライドシェアも開発中というのは、未来な感じがします。空での移動のほうが地上より早く安いのであれば、移動手段の一つとして考えてもおかしくないですよね。

「飛ぶクルマ」というのは、古くは『バック・トゥ・ザ・フューチャー2』でも出てきましたが、自動車のカタチをしたまま空を飛んでいるものを想像しがちでしたが、現実に具現化したのはドローンのカタチをしているものでした。

このコンセプトは突飛だが、新たなクルマのつくり方や、走行のメカニズムの“再発明”まで考えてみることは決して無駄ではない。」とこの記事では結んでいます。

20世紀を代表するプロダクトである自動車のカタチにさえ疑問を持ち、移動の本質をとらえて具現化する世界―上下分離や四本脚、ヒューマノイドや空飛ぶものまで―今まさにそういう世界にいることを実感します。