「観音開き」(英語だと「Reverse Swing Doors」)と聞いて何を思い浮かべるだろうか。
先日行ってきたトヨタ産業技術記念館で受けた説明を思い出しました。豊田喜一郎の情熱で取り組んだ初の量産乗用車「トヨタ AA型乗用車」で採用された「観音開き」は、当時の利用者に着物の方が多くいたことを理由にされており、その後は少なくなったと説明を受けました。
それから83年も経った本日、デトロイトショー2019(North American International Auto Show 2019)で日産が発表した 「NISSAN IMs」でこの観音開きを見ることになりました。
観音開きの自動車は、国内でもいくつかあるようで代表的なのは「MAZDA RX-8」でしょうか。もちろんトヨタでも「TOYOTA LAND CRUISER」がそうですね。
コンセプトとしての傾向
最近であれば、パリモーターショー2016 で発表された「LEXUS UX Concept」が観音開きを採用していましたが、量産が決定してからは普通の4ドアになっていました。「Porsche Mission E」も同じです。
コンセプトカーとしての見栄えを優先したからでしょうか、それとも理想としては観音開きなんでしょうか。本音を知りたいところです。
コンセプトカーとして観音開きを採用している車は多く、最近目立っていたのはジュネーブモーターショー2018 で発表された「Aston Martin Lagonda EV」です。
どうも、次世代EVとか自動運転とかを考慮に入れるとドアの開き方も変えたくなるのでしょうか。どのメーカーも「観音開き」にしてしまう傾向があるようです。
日本の駐車スペースを考えると、スライド式しか選択肢がないような気がしますが、どうなんでしょう。ちなみに、パリモーターショー2016で発表された「Renault EZ-ULTIMO」はスライド式のドアでした。
冷蔵庫で考えてみる
観音開きの有効さがわかるものに冷蔵庫があると思います。「フレンチドア」と呼ぶほうがこの場合自然でしょうか。メリット・デメリットは、以下のようなことが考えられます。もちろんほかにもあると思いますが (為念)。
- ドアの開く向き(置く場所)を気にしなくていい
- ドアが小さく軽いので開閉しやすい
- ドアの開閉が小さいため節電になる
- 全部開くと一度に中を見渡せる
- 間取りを気にせずに出し入れできる
デメリットは、次のようなことが考えられます。おおよそメリットがデメリットにも働いている感じですね。
- 置く場所によって、ドアが全開しにくい(有効に使えない)
- ドアポケットの狭さ(収納スペースの小ささ)
- ドアポケットがどちらにもあるため、開口部が狭い
これを自動車にあてはめて考えてみると、冷蔵庫の場合は従来1つだったドアを2つに分割したことによるメリット・デメリットが大きいため、そのまま自動車には当てはまらなさそうです。一方で、(冷蔵庫を)置く場所を気にしなくていいメリットというのは、さしづめ駐車スペースや駐車する車の方向に対しては有効に働くように思えます。
観音開きを採用するメリットとは、〈出入りのしやすさ〉と〈中を見渡せる〉ことに大きく関係してそうです。ひょっとするとコンセプトカーで採用するメリットは、中(インテリア)を見せる/魅せるための手段だったりするのでしょうか。
ちなみに、ガルウィングを採用している新車は「Tesla Model X」や「PAGANI Huayra」くらいだそうです。ガルウィングが採用される理由は、乗り降りしにくいスーパーカーやレーシングカーが少しでも乗り降りしやすいように改良された結果らしいのですが、観音開きの場合はどういうユーザー価値(メリット)があるのか、もう少し考えてみたいと思います。
Image by THE MARVIN PORTFOLIO OF DOORS