前回の記事に続き、#Automagic ポッドキャスト「#247 デザイン / デザイナーって言葉がブレまくりですよ」 後半で触れた「モビリティ」について自分の考え方含めまとめてみます。
使いこなせない自分が悪い
複雑な操作を要求する製品に対して「使いにくい」と思うのはごく自然なことですが、こと車に関しては「うまく操作できない自分が悪い」と思ってしまう節があります。対して、iPhone が発表されてからのデジタルプロダクトは「マニュアルがなくても使える」という考え方が浸透しています。
どちらが顧客視点かは一目瞭然ですが、車にも同様の考え方が必要になるのではないかと思います。
運転のしやすさを考える機会
運転を「マニュアルがなくても使える」状態にするためには、1社だけの努力では難しいところがあります。業界標準としての基準を見直すという話にもなるでしょうし、運転そのものを捉え直すくらいの意気込みが求められると思います。
そう考える背景には、自動車業界におけるパラダイムシフト「CASE※」があげられます。つまり、運転行為における「ザッピング※」が可能になってきたと言えるのがその理由です。
デジタルプロダクトにおける体験と対比して整理してみるとわかりやすいです。
- いつでもどこでもアクセスが可能 / いつでもどこからでも送迎が可能
- すぐに別の画面に移ることが可能 / シェアカーで別の車に乗換が可能
- 元の状態に復帰することが可能 / 車を変えても個人情報は保持
- ハードの買替が可能 / サブスクモデルで乗換が可能
- ソフトのアップデートが可能 / FOTAアップデートが利用可能
別の車に乗る機会が増えれば、特定の車の「使いにくさ」は浮き彫りになるでしょうし、所有ではなく利用が増えれば、標準化を求める動きが加速すると思います。単純に、使いにくければ使われないという状況が生まれやすくなるため。
※CASEとは、Connected(つながる)、Autonomous(自律走行)、Shared(共有)、Electric(電動)を意味する言葉です。
※ザッピングとは、テレビ視聴において、リモコンでチャンネルを頻繁に切り替えながら視聴する行為のことである。
移動できる機会を再考する「MaaS」
「MaaS※」と言った場合に思い浮かべるのは、いくつかの交通手段をシームレスにつないでひとつの体験として見る「マルチモーダル」という考え方です。
現在、スマホを入口に、さまざまものがつながりエコシステムが成り立っています。自動車も、EV(電動自動車)になり、通信端末を搭載することで、スマート家電と同じようにスマホからの利用が可能になってきました。そうして繋がるネットワークを背景に、タクシーや電車、バスといった公共交通機関をスマホから一括して利用(検索や予約、決済まで)することが可能になるというわけです。
カスタマーエクスペリエンス(カスタマージャーニー)におけるタッチポイントのひとつがウェブやアプリであったように、移動における交通手段のひとつがタクシーという具合です。
そのため、利用機会が減ってしまった公共交通機関を改めて利用してもらうキッカケにもつながるため、地方の自治体を中心に「MaaS」という言葉を使った取り組みが増えはじめています。具体的には、国交省・経産省の『スマートモビリティチャレンジ』と呼ばれる事業推進プロジェクト(19事業が認定)があり、サービス提供会社と自治体が組んで実証実験を行う取り組みです。
「移動したいけど移動しにくい」といった交通事情や「移動したいけど移動できない」いわゆる〈移動弱者〉のニーズは地域ごとにすでに顕在化しているわけですので、MaaS の文脈でこれらを再検討してみようというムーブメントと見ることができます。
※MaaS(マース)とは「Mobility as a service」の略で「サービスとしての移動」を意味します。
自動車メーカーのジョブは変わるのか
シェアサイクルや電動キックボードなどの「マイクロモビリティ(パーソナルモビリティ)」が注目を浴びています。
時速0km〜6km程度の小型のマイクロモビリティが出てきたことで、これまでの自動車メーカーの立ち位置はどう変化するのでしょうか。先日参加した上海の「CES Asia 2019 Exhibition Report」では、電動キックボードをトランクに収納する電動自動車(ヒュンダイ)が出展されていました。
こうしたモビリティプロダクトを展開することで、移動体験(全体)をカバーする企業がいても不思議ではありません。現に、自動車メーカーが自前の電動キックボードを製造しているケースが増えています。一方で、モビリティプロダクトが増えることで、より重要になってくるのは「MaaS レベル」でも言及されているサービスプラットフォーム(決済や顧客データ)の問題です。
自動車メーカーが電動キックボードを製造するのと同じように、これまで自動車には関係の少なかった家電メーカー(ダイソンなど)が自前で自動車を製造するという動きがあります。
移動体験(全体)におけるモビリティプロダクトをトータルで提供するという観点と、その移動体験で行われるサービスを提供するという観点は、重なっているようでいて、まったく別のレイヤーと見るほうが自然です。それぞれにおいて、既存のプレイヤーが存在している中で、レイヤーを超えてどのようにアライアンスを組むかで今後の自動車メーカーの立場が決まってくるように見えます。
すでに始まっている進化
また長くなってしまいましたが、モビリティの進化とは主に以下のようなことが多発的に起こることを意味しており、すでに始まっています。
- MaaS の文脈で、公共交通機関(パブリックモビリティ)が進化する
- 輸送・配送が進化する、配送用・商用トラックが自動運転になる
- 送迎用のタクシーやライドシェアが増える
- 車椅子などのアシストを含む、パーソナルモビリティが進化する
- 都市部でのマイクロモビリティが増える
サービスデザインの視点で考えると、これらの動きは1プロダクトの動きではなく、エコシステム全体の動きとして見ることができますので、部分最適ではなく全体最適を狙った取り組みが求められそうです。
さて、宣伝ですが、7月24日に東京「Wework乃木坂」でオープンディスカッションのイベント『テスラ x モビリティを考える』を開催します。テスラに興味ある方、未来のモビリティに興味ある方はぜひご参加ください。
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image by Tesla Roadster
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