前の記事で「CES Asia 2019」カンファレンスについてまとめてみましたので、今回はイベント会場に移動して見聞きしたことを自分なりに書いておこうと思います。
コンセプトカーというデザイン
「未来のクルマはどうなるのか…」技術情報はネットで見ていたものの、中国のクルマは実際に見ることは少なく、乗る機会も滅多にないので、今回はおおいに期待して参加しました。
コンセプトカーとしては、KIA の「R.E.A.D.」や Hyundai Mobis、Audi の「AI:ME」や日産の「Invisible to Visible」などいくつかありましたが、それらに共通しているのは、車内がスッキリしていて現在の車両のような機械のイメージはほぼないということです。素材を前面に出した空間表現といえば伝わるでしょうか。小さなテーブルがあったりするだけの小さな個室(インテリア)になっています。
車内に何も置かない(余計なスイッチ類やディスプレイ端末などをなくす)ことは大いに結構なのですが、「では、一体どうやって操作するのか?」に対する答えが各社からはあまり見えてきません。自動運転がベースなのはわかるのですが、情報表示や操作については何もソリューションがないのでしょうか。
唯一、その答えにつながると感じたのは KIA のジェスチャ操作「V-Touch」システムです。クリック・ローテート・スワイプの3種類だけで操作させようとする構想は、車内に余計なスイッチ類を置かない変わりの対案になります。これはとても興味深かったです。
ジェスチャ操作については、40インチの大画面を搭載する EV スタートアップ「BYTON」でも採用しており、大画面を手元のタッチパッドから操作するだけでなく、非接触でのジェスチャを可能にした点は新しい。ステアリング(ハンドル)にもタッチパッドを搭載しているので、操作はそちらがメインになると思いますが。
大画面のタッチ操作や非接触のジェスチャは手を上げ続けると疲れるし誰もやらなくなるだろう…と思うので、細かな指だけの動作や音声操作のほうがメインになっていくと考えるのが妥当な気がします。
いずれにしても利便性を向上するためには、代替手段含め工夫が必要な分野だなと思いました。
シミュレーターとストーリー
一方で、座ってムービーを楽しむシミュレーターは三面鏡のパノラマスタイルで大きなディスプレイがたくさんありました。いずれも操作はできず、用意されたムービーを楽しむだけというものでした。なかには、工場の製造工程からVRで体験できたりするものもありましたが、操作体験ではなくムービー鑑賞がほとんどでした。
その多くが、次のようなストーリーで構成されていたのは興味深かったです。
- モバイルとの連携(自動送迎など)
- 走行途中にAIと会話(ナビとセンサリング)
- 場所およびルートにおける人の記憶(トリガー)
- 車内でタイムトラベル体験(動画再生やルーフ投影など)
ディスプレイとタッチ操作
「操作できるかどうか」という点では、乗ることのできるクルマでいくつか試してみました。画面が3枚の構成が多く、中央には縦型・横型ディスプレイなどがあり、手元でタッチ操作をするものまでありました。
中には、音声操作をデモしているクルマもありますが、正常に動かず何度も声をかけている風景を見てしまいました…。その他に、スマホくらい小型のディスプレイをハンドル前に設置したものや、横長細のディスプレイなどもありました。
Polestar 2
最近リリースされたばかりの EV「Polestar 2」にも早速座ってみました。Polestar 2 は VOLVO グループなのでハンドルは VOLVO のものと同じでしたが、中央の縦長ディスプレイには、ビルドインされた「Android Automotive OS」が搭載されている唯一のクルマです。先日の Google I/O でも話題になりました。
車内にいながら、スマホタブレット(Android)を触っているような感じです。実際にシミュレーションできるアプリ「Explore Polestar 2」も公開されているので、動きを確認することができます。
実際に触ってみても動きになんの違和感もなく、問題なく操作することができました。一部のアプリ(地図)がメータークラスターと連動するなど、車載システムとの連携も部分的にはできていたので期待が持てました。
Autonomous x RVRH
「自動運転 x バス」という組み合わせで、車両デザインのコンセプトが展示されていました。これまた中身はとくになく、車両とは別のスクリーンでコンセプトムービーで説明。車両は、近づくとドアが開閉して乗るようなシステムです。中にはボックスシートで向かい合って座るスタイルで、外装には電子掲示板(顔文字とかメッセージ表示)などがありました。
また、RVRH※の例としては、車載ディスプレイはなく(Pepper のような)ロボットが中央に鎮座しており、車両中央にいるため、どの席からも声がかけやすい配置になっていました。AI なので、質問をすれば答えてくれるというものでした。
※「RVRH」とは「Robo-Vehicle and Ride Hailing」の略語。
MX4Dのような車内体験
Audi で映画『Avengers Age of Ultron』が上映されていたのですが、車内でも同じ映像が流れている演出がありました。映像に合わせて車内が揺れたり、シートが可動したりハプティック(振動や衝撃などをユーザーインターフェースの一部として使用すること)を感じる、まさに映画館の「MX4D」のような体験をすることができました。
それはまさしく前回の記事に書いた、Audi の戦略「移動時間の過ごし方」と「車内体験の差別化」にあたるものだと改めて理解することができました。ただこれは移動中だと怖いよね… (汗)。
e-Bike 収納トランク
驚いたのが、Hyndai の「e-Bike(電動バイク)」です。e-Bike そのものではなく、それを折りたたんで収納できるトランクです。トランクの地下室ともいうべき場所に、ボタンで自動開閉するトランク・イン・トランク。
モビリティ(マルチモーダル)の視点で見た場合、たしかに車から降りて e-Bike に乗ることは想像できるのですが、はたして乗り終わったあと汚れたバイクを同じように折りたたんで収納するだろうか…。少なくても中国の e-Bike 市場を見る限り、自動車とセットにする意味は少ない気がしました。
スマートホーム構想
クルマ以外では、Haierの「Smart Home」が展示スペース含め大きなエリアで展開されていました。部屋に見立てた展示で、スマート家電と呼べる製品(冷蔵庫や空気清浄機、ミラーなど)に触れると専用の UI が表示され、タッチで操作可能になります。
IoT で考えると、UI は製品からは引き剥がしてスマホで操作することが考えられますが、ここでは製品自体にタッチパネルが内蔵されており、製品それぞれに合った UI が提供されていました。個人的には、製品自体にタッチして操作するのは最小限の手続きならまだしも、情報量を多くすると本末転倒だろうと思うのですが、どうなんでしょう。
そのほか、顔認証すれば自動でついてきてくれる「temi」のパーソナルロボットも楽しげでしたし、Emporio Armani とコラボしたスマートウォッチ「Fossil」も含め、全て Android ベースで動くアプリだったのが印象的でした。
まとめ
2回に分けて書くくらい情報量が多いのは久しぶりです。今回はイベント会場についてですが、以下のようにまとめることができます。
- コンセプトカーはインテリアデザイン、スッキリさせ素材を前面にした空間表現
- 操作方法は、ジェスチャ・タッチ・音声がシーンごとに必要
- 未来ストーリーはどこも同じ(スマホ・AI・センサー・場所の記憶・タイムトラベル)
- 自動運転技術の発展に、AI ロボットの登場が期待できる
- 車内で映画体験(MX4D)はふつうに楽しめた
- クルマと e-Bike のセットは、シームレスになり得るか疑問
- スマート家電(IoT)の UI とその課題が浮き彫りに
ということで、ここまでが上海「CES Asia 2019」のレポートでした。
カンファレンスに関する記事は「CES Asia 2019 Conference Report」で読むことができます。
Image by CES Asia 2019 Exhibition
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