CES Asia 2019 Conference Report

先日(6/10〜6/15)上海に行ってきました。運よく「CES Asia 2019」に参加することができたためです。 はじめての中国でしたが、個人的にはとてもいい体験をすることができたので忘れないうちに書いておこうと思います。

中国は今、革命前夜にある

初日のキーノートに、HUAWEI の Shao Yang 氏が「中国は今、革命前夜にある」と宣言し、AIの活用を掲げるとともに「1+8構想」として、「スマホ」を入り口に、8つの分野(タブレット・テレビ・スピーカ・メガネ・時計・クルマ・イヤホン・PC)で連携するエコシステム「HiLink」を構築すると豪語した。簡単に解釈すると IoT とエコシステムの構築になるわけだが、「車載(機械)をいかにスマホに換えるか」というコメントは(スマホの会社だけに)非常に説得力のあるコメントだった。

HUAWEI
HUAWEI

スマホがエコシステムの入り口に

この「スマホを…」というアプローチは、HUAWEI だけに限らずどの中国メーカーも同じことを言っていた。2日目のカンファレンス AMCHAM の講演の中でも「自動車 OEM より、コネクテッド、サービス、アプリの提供企業が勝る」とスマホをチラつかせながら熱っぽく語っていたのが印象的だった。

中国市場における自動車業界はビジネスチャンスもあり右肩上がりだが、特有のコンテクストを含んでいる(wechatDiDi など生活インフラが独自の経済圏で成り立っている)ため、そのプラットフォームをベースに考えないとならないという指摘だ。

DiDi
DiDi

上海にいる間に『アフターデジタル』の著者であるビービットの藤井さんとお会いした。中国の市場動向から今後すべきことなど多くを語り、示唆を得ることができました。その本にあった次の説明を思い出した。

アリババは、中国国民の約半分にあたるユーザー数のオンライン購買データを所持しています。 子会社が提供するアリペイも含めると、オフラインの購買データも国民の半分程度を所持しています。

アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る 藤井 保文

だからこそ、「高頻度接点による行動データとエクスペリエンス品質のループを回すこと」が可能になり「ターゲットだけでなく、最適なタイミングで、最適なコンテンツを、最適なコミュニケーション形態で提供すること」を可能にしているのだ。

自動車メーカーの戦い方

一方、自動車メーカーはこうした状況をどう見ているのかも個人的に非常に興味があった。

初日最後のキーノートで「Audi」China President の Thomas Owsianski 氏は「不可能という言葉には「可能」が入っています」という『ティファニーで朝食を』の名言を引用し、運転中のロスタイムにこれからの機会があるとし、同社の姿勢を「伝統からハイエンドモビリティ、車の生産からモビリティにシフトする」と宣言した。どこかで聞いたことのある言葉だと思ったが、結局は「Audi Connect」で何でもできる世界を描いていると言っているに過ぎなかった。

奇しくも2日目最後のカンファレンスで、EVのスタートアップとして注目される「BYTON」CEO の Daniel Kirchert 氏も Audi と同じことを言っていた。結局は「BYTON LIFE」でさまざまなサービス展開をするから「BYTON ID」で個人の趣向を管理して、乗った瞬間から個人の趣向がわかった状態にすると。つまり、データをとって車体験に還元していく、というようなことだろうと理解した。

BYTON
BYTON

データをUXとプロダクトに返すこと」これは書籍『アフターデジタル』にも書かれていることですが、上記のような説明を自動車メーカーから聞くたびに大きな違和感を覚えます。ユーザーはIDを登録したいわけではなく、どんなサービスが利用できるのかを説明すべきだと思ったからです。それと、今後新しいサービスが使えるようになる、というのは何の魅力にもなりません。すでにユーザーの手の中にあるスマホで、必要十分なサービスを利用しているわけですから。

価値のある時間に

Audi からスピンアウトした「Holoride」CEO の Nils Wollny 氏は「価値のある時間に」と題し、移動中をもっと楽しい時間に、良い体験にするための取り組みとして同サービスを披露。移動中の車内空間(体験)に付加価値をつけることで、移動自体の付加価値を高める取り組みとして紹介した。

holoride
holoride

アクセンチュアの方が書かれた書籍『Mobility 3.0』に、自動車メーカーとしての戦い方を次の3つで説明されてていたが、見事にこの2つ目をなぞった形で理解することができた。

  1. 車両供給力を武器に事業の立ち上げを先行する戦略
  2. 車両およびコネクテッドの付加価値で、サービスの品質向上や移動空間の体験を高める戦略
  3. 保守・運用コストを最小化し、収益機会を最大化する戦略 

仮に、車内体験で差別化したいのであれば、万人には適合しなくても、移動できるプライベート空間を何よりも最優先する顧客層をアーリーアダプタとして事業を立ち上げていくことが望まれる。

Mobility 3.0: ディスラプターは誰だ? 川原 英司

まとめ

  • 中国は、スマホがすべてのインターフェースになっている
  • エコシステムとは、アプリを介したサービスプラットフォームである
  • 自動車メーカーは、独自のID獲得とサービス利用機会を天秤にかける
  • 自動車メーカーは、移動体験の差別化をはかる

カンファレンスについてまとめてみましたが、イベント会場もいろいろ見て回ったので次回はそのあたりに触れてみたいと思います。

Kerry Hotel
Kerry Hotel

イベント会場をまわった記事は「CES Asia 2019 Exhibition Report」から読むことができます。

Image by CES Asia 2019 Conference

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