前回から4年ぶりにイベント「Small IA さみっちょ」を開催しました。
今回は Facebook ライブ配信で行い、さまざまな疑問や質問に答えていくというスタイルにしました。テスト配信を含めると約2時間くらい話していたと思います。登壇者は、森田雄さん(ツルカメ)と和田嘉弘さん(インテリジェントネット)とボクと3人で行い、鎌田麻三子さん(ディレ協)にサポートいただきました。
当日の視聴者はそれほど多くはなかったと思いますが、その場に駆けつけてくれた方もいたりで、思ったより濃い話ができたと思います。
Small IA とは
2012年ごろの海外イベント(IAサミット等)で、IAの役割や範囲が、WFの設計などが主業務だったところから、Webだけにとどまらず都市計画やCSRなどに展開していった背景(総じて「Big IA」と呼ぶ)があり、当時WFの設計に従事していたIAsから疑問が生まれたのが発端。したがって、そうした「Big IA」を前提にしたような海外イベント「IAサミット」のカウンターパートとして「Small IA さみっちょ」が生まれた。
4年前に雄さんが書いた『Small IA宣言』にも書かれていますが、論争にもなった「Big IA と Small IA」で分けた場合の「Small IA」です。つまり、WFを書くなどの設計行為に焦点をあてよう、というものです。
これをボクなりに咀嚼すると、抽象概念で頭を使うだけで終わるのではなく、そこからどう具現化するのかといった〈具体的なイメージを作り出す行為にこそ焦点をあてるべきだ〉と解釈することができます。そしてその具体的なイメージを作り出す行為のうちもっとも重要になるのが「情報アーキテクチャ」という分野であり、その行為は頭の中だけにあるのではなく、いわゆる「デザインの現場」や「開発の現場」にある、ということだと思います。
IAの間違った理解
IA の概念は、もともと大きなビジョンではあったが、海外イベント「Euro IA」2013年当時、「IA は UXD + IXD」という話まで出ていた。つまりIAが全部を包含する概念として位置づけられたこともあった。
- 情報になるまえの種みたいなものから取り扱う→UXデザイン
- 情報にフィードバックが与えられたことによる二次情報→インタラクションデザイン
この2行は正しいと思うが、表現するなら「IA は UXD の一部」とでもしたほうが自然だったろう。
よくある質問
今回は Q&A サービス「Slido」を使用して、いただいた質問をプロジェクターで移しながら会話をしていきました。その中でも印象に残った質問と回答を振り返ってみたいと思います。
書き方の問題ですが、ボクの言葉として書き記していますのでご了承ください。
Q. Web界隈のIAは、UXデザインに吸収合併されたの?
吸収されたと言っていいと思います。とくに採用面では。
大きな視点で見れば、デジタルプロダクトのデザイン業が、ニッチな専門分野から、一般的なビジネスとしてみられるようになったためとも言えます。市場が成熟したことによる変化ともいえるのでないでしょうか。
- 対比すると「UX」は人気があるが「IA」は人気がない。
- そもそも求人募集でも「IA」で募集しても人は集まらない。全員「UXデザイナー」という肩書を志望している状態。
- ただし、集まる若手にはIAのスキルが備わっていない問題がある。
- UXデザイナーの募集要項は、実態はIA業務が主だったりUIデザインの場合が多い。
- ワークショップなどはするが、デジタルプロダクトの情報設計までしていないことがある。
Q. 4年間で変わったことは何ですか?
Web界隈の視点でみると、ある程度産業が成熟して、作り方や勝ちパターンができてきた。昔ほど勉強しなくても情報は手に入りやすくなったのではないか。
一方で、昔IAsとして活躍していた人材が、現場から離れ Big IA 業務に移ってしまったことで、いわゆるデジタルプロダクトにおける情報設計部分の品質が担保できなくなってきているのでは、という危機感もある。そのため、教育する側の人間でさえ情報設計スキルが低かったりする。
- UXデザインでコンセプトやワークショプは含むが、WF(情報設計)の品質が低い問題
- どこに内部コストをつけるのか、組織のニーズに依存する問題でもある
- そこにこだわる人がいなくなった⇔アップデートすることが容易
- 情報設計をやってた会社が、やらないし、やってくれなくなった背景
Small IA から Big IA に人材も価値も移ってしまい、結果 Small IA の役割を担う人材とタスク部分がスッポリ抜け落ちてしまう「IAの役割におけるドーナツ化現象」を絵にしてみました。
Q. Webから他業界を経た結果、IAのスキルはご自身の中でどのように変化しましたか?
デジタルだけではない分野を経験できたのは大きかった。IA的な視点とかアイデアの構築プロセスは、デジタルでなくても共通していることが実感できた。
実際にしていたことは、総じて「企画」だと思います。デザインフェーズに落ちてからの企画になるため、具体化をしたほうがよく、そのために表現としてWFやカスタマージャーニーを描いて説明というようなことをしていました。業界が変わったからといってもやっていることは変わらないです。
分業の功罪
分業の揺り戻しがあるのではないか。つまり、UXデザインの視点で見る役割は新たにできたが、専門分野としてのIAの視点が消えてしまったように見える。概念的に包含すべきところを包含できず、情報設計のタスクが抜け落ちているように見える。
- 職能としてのIAがなくなっている問題(タスクの抜け落ちがありそう)
- オーナー制(PO)など、こぼれたタスクを拾う役割が必要になるのではないか。
- 一貫してプロジェクトに関わるスキル(IA)が必要なのではないか。
デジタルでビジネスをしている人の強み
他業界に移ったことで思い知ったのは、デジタルに関わる人は誰でも(どの職能の人でも)絵が描けること(最終イメージが頭で想像できること)です。
もちろん下手な絵かも知れませんし、デザインされていないものかも知れませんが、「こんな感じ」というのが思いつくこと、雑だがパッと絵が描けることは他業界ではありえないことで、かなりの強みになります。
Q. IA学びたい人は多いのですが、どこから手を付けるものでしょうか?経験からでしょうか?
古くは著書『IAシンキング』でも触れている、情報の単位を理解するところからだと思います。Webでいえば、インターネット全体があって、サイトがあって分類があってページがあって、画面内にコンポーネントがあるというような。
- 情報を整理することは、IAという職種でなくても必要な作業です。企画だろうが営業だろうが関係ありません。
- 何が「情報」なのかを理解するところから、が重要だと思います。
- そのためには、最終アウトプットのイメージを想像できること(サンプルを見まくるなど)
- 用語のズレ(記号論的問題)など受発注の関係では影響大なので、モノをみて判断すべきでしょう。
Q. IAやってて1番楽しいと思う瞬間ってどんな時ですか?
「IAとは編集だ」と思っていた時期がありました。編集とは(戦略もそうですが)バーターがつきものです。こっちを立てればこっちが立たない状態が頻発しますので、そのときの思惑と表現が一致したときが一番気持ちいいです。
テストしなければわからないようなことでも、テストせずにその解が直感で出せること。これは誰にでもできるわけではないので、うまくハマれば一番嬉しいです。
Q. Web制作界隈において(肩書きではなく考え方や手法としての)IAは定着・浸透したと思われますか?
したと思います。ただ、今(IAを)やりたいという人が少ないというのは問題があるようにも思います。
情報も増えサンプルも増えたので、及第点のものはある程度できるようになってきたのではないでしょうか。ただ、ゼロイチではなくカイゼンのほうが増えていると思うので(同じIAと言っても)市場からのニーズも変わってきていると思います。
まとめ
業界が変わったことで痛感したことに「自分の外部ネットワークの持ち方」の重要さがあります。会社の価値と世間一般の価値はたえず変化します。会社の価値だけで自分を評価してしまうと、長くその会社にいる人と比べてしまうことになり必ず挫折します。
組織の人事評価とはそういうものだと思いますが、せっかく同じタイミングで同じ業界にいるのですから、同じ業界どうしのつながりを持ち、自分の評価をそのネットワーク越しで見ていくといいと思います。そうした外部性は、デジタル業界やWeb業界であれば尚さら大きく働くはずですので、今回のイベントだけではなく積極的なつながりを活用してもらえるとよいかと思います。
そういう意味でも今回のイベントは継続していこうと思いますので、よろしくお願いします。
今後は…
不定期で今回のようなライブ配信をしていきます。Facebook ページを開設したので、こちらにアクセスしていただき「いいね!」してもらえると助かります。次のイベント告知や質問の受付はこちらから案内するようにします。
- Facebook ページ「Small IA」の開設
- ライブ配信イベントの開催(隔月で予定)
- 質問受付スタイル(FBページから案内予定)Slido #smallia
よろしくお願いします。
2 Comments
Add Yours →[…] Beyond Small IA #smallia | bookslope blog […]
[…] 4年ぶりに開催したイベント「Small IA さみっちょ」を経て、オンライングループ「Smallx Camp」を開設しました。発起人は、森田雄さん・和田嘉弘さんと鎌田麻三子さんです。 現在、Facebookグループで招待制で運営しています。 […]