UI/UX Design for Mobility #WeWork

WeWork 主催のオンラインイベント「モビリティにおけるユーザーエクスペリエンス」に登壇しました。そこでお話しした内容を少しだけ抜粋して解説してみたいと思います。

スライドは、Speaker Deck に公開しておりますので、合わせてご覧ください。

モビリティにおける UI/UX とは

まず、モビリティにおける UI/UX とは、アプリのことではありません。今回は、モビリティを代表する自動車の運転席にみられるユーザーインターフェースを取り上げています。自動車業界では古くから HMI※ という言葉を使っていますので、今回もそれにならい HMI と表現しています。

LAYER

人間と車との境界を次に示す5つのレイヤーで示す場合、内側から2つ目までの境界を指します。車の動力を操作する意味において、ステアリングなどのハードとインフォテインメントシステムなどのソフトはユーザーインターフェースの一つになります。

※HMIとは「Human-Machine Interfacen」の略で、人間と機械との間で情報のやりとりを行う境界という意味です。

HMI デザイントレンド

最近、SpaceX Crew Dragon のタッチインターフェースが話題になりましたが、その管制システムも含めとても現代的です。もちろん自動車に限らず、船や飛行機、スペースシャトルに至るまで HMI は共通の課題を持ちます。そもそも「操作のしやすさ」という観点では、さまざまな操作がある中、単純にレバーがタッチになるからといって、操作がしやすくなるとは限りません。

昨年、米軍駆逐艦の操作をタッチからレバーやスロットルに戻すという事件も話題になりましたが、タッチ操作が誤操作を生むのではなく、タッチ操作の習熟度が低すぎたことでの誤操作が原因といわれています。つまり、ふつうに操作できている状態を前提条件に比較しないと「使いやすさ」は比較できないわけです。

自動車の HMI デザインの変遷としては Tesla のデザインがわかりやすいので、Model S/XModel 3Semi などのディスプレイ配置におけるパターンを切り出して紹介しました。それを踏まえて、BYTONNIO などの中国車と並べて、2つのデザイントレンドの潮流を示しました。

Tesla HMI Design Pattern
TRENS
  • セパレート型
    NIOPolestar2 などに見られる、メーター類とインフォテインメント類を分離したタイプ
  • コンバイン型
    BYTONSONY Vision-S などに見られる、統合タイプ

これは、直近で発表されたコンセプトカーの Polestar Precept SONY VISON-Sダイソンの EV などにもあてはめて分析することができますので、有効なリファレンスになるかと思います。

HMI デザインマップ

ハードとしてのディスプレイに表示されるソフトを合わせて考えた場合、それらがどういうシステムで動作するものなのかとても興味がある分野です。たとえば Android Automotive OS などの Car OS が今後主流になるとしたら、手元にあるスマホとの関係性はどういうものなのか。実際に、Car OS である「Android Automotive OS」と、スマホのアプリをミラーリングして表示する「Android Auto」は別物です。

下図はそのあたりも見つつ、4つのグループに分けてマッピングしたものです。

HMIデザインマップ

いわゆる自動車業界(上側)とハイテックカンパニー(下側)の対比と、新しいシステムを搭載している左側と旧来のシステムを拡張した右側です。HMI と言った場合に、インテリア・デザイン(ハード)を指す場合と、搭載するシステム(仕組みやソフトを含む)を示す場合とがあり、そのメーカーや企業戦略抜きには語れない側面を持ち合わせています。

MaaS における DX とは

その大きなディスプレイは誰に向けての情報かという点で、運転手(ドライバー)ではなく乗客(パッセンジャー)の視点が重要になります。つまり運転手が運転中に見る情報ではないという点です。もちろん自動運転技術の発達にともない、運転しなくていい世界がくるというのもありますが、それと切り離して考えても Uber の乗車体験で紹介したように、乗客は常にスマホを見ている傾向があるということです。

そのため、乗る前にスマホで検索するという行為もモビリティの体験に含まれます。遠隔でエアコンを操作する EV 同様、乗る前から乗ったあとまでを乗車体験としてとらえる必要があります。そのため、スマホで検索した際に、その移動手段(バスや電車などの移動体)が出てこなければ、その移動体が存在していないのと同じという現象が起こり得ます。

地方のバス路線や運行ダイヤの情報を GTFS 規格にしてデータ化を推進しているのは、その背景があるからだと聞きます。そうしたこれまでアナログで管理していたものもデジタルデータに置き換えること「DX」が MaaS 時代の要請として浮き彫りになってきています。

これだけであれば「MaaSレベル2」にあたりますが、スマートシティの文脈でいう「MaaSレベル4」に必要なパーソナルデータとの連携やエリアごとの行政システムとの連携もますます重要になっていきます。

MaaS アプリのデザインガイド

MaaS アプリと呼べるかどうかはビミョーですが、交通手段を検索し予約から決済までを備えたサービス・アプリ群を紹介します。現在の方向性というか特長から4つのエリアに分けてみました。

MaaS アプリのデザインガイド

上側が、マルチモーダルとして他サービスとの連携が多くあるもの、下側をシングルモードとして単一の交通サービスを中心に構成しているものを指します。左上に観光やイベントに特化してるもの、右下に公共性が強いものを配置しています。また、左下に新しいモビリティサービス(車椅子やキックボード、AI運行バス)を示しています。

アプリといってもここにあげたネイティブアプリのほかにも、ブラウザで利用するウェブアプリもあります。なかなか総合的にこれらを俯瞰することは難しいですが、ここに分けた4つの方向性は今後の MaaS で提供されるサービスの特長として見分けることはできると思います。

このように、車に関するモビリティの UI/UX と言った場合、車の運転席にみられる HMI や乗客の体験、MaaS にみられるようなサービス別のアプリ体験など多岐にわたります。

「MaaSコントローラー」という言葉がありますが、この場合、乗車体験そのものに直接関与するスマホのアプリがユーザーインターフェースの筆頭になることが考えられます。

POC の重要性

以上のようなことを、考え実践していく(モノに昇華していく)には、POCの実施が重要で、次の3つを念頭におくといいでしょう。

  • 企画フェーズにおけるデザインである
  • 作ると検証は常にサイクルする
  • ユーザー体験とは自身の体験である

プロセスは線形ではなく、サイクルすることを念頭に置くとわかりやすいです。考えるべきタイミングというのは一旦無視して取り組むことで、先にアウトプットが生まれる状況をつくることです。アウトプットを先に進めるためには、常に自身に置き換え考えている必要があります。

そのためには、普段使っているスマホの利用価値を体感し、モビリティにおけるスマホの利用を常に考えておく必要があります。

  • HMI デザインは、ドライバー視点からパッセンジャー視点に
  • MaaS アプリのデザインは、シングルモードからマルチモーダルに

最後に、チームが共同ワークショップやユーザー調査、検証に参加することで意思の共有がしやすくなる点を紹介しました。

MaaS x Card』を開発した背景もそれがあります。ノンデザイナー向けに開発したワークショップデザインツールで、今回ご紹介した移動や乗車体験を可視化したカードになります。

MaaS x Card

※POC とは Proof of Concept の略で「概念実証」の意味。新しい概念や理論、原理、アイディアの実証を目的とした検証やデモンストレーションを指します。


スライドは、Speaker Deck に公開しておりますので、合わせてご覧ください。

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