2017年4月14日(金)に東京で開催された「UX Days Tokyo 2017」のカンファレンスに参加しました。今回で3回目の UX Days Tokyo は、国内最大級のUX系イベントで「UX LONDON」がベースになっています。今年も所属するネットイヤーグループはシルバースポンサーとして参加することができました。
テーマは「組織で作るUX」ということで、スピーカーに元 Twitter のUXマネジャーでもある Cennydd Bowles をはじめ海外の著名な方々をお招きしたカンファレンスでとても豪華でした。
今回は、当日午前中に所用があったため午後からの参加となりました。お昼のお弁当は、毎年恒例になりつつある今半のお弁当です。午前中にあったセッションは聞けなかったので、ほかの方のイベントレポートに期待したいと思います。
Friction, More or Less/フリクションの一覧
『Seductive Interaction Design』の著者でもある Stephen P. Anderson からは「6 Kinds of Friction/6つのフリクション」を紹介いただきました。「Friction」とは摩擦や衝突と訳すことができますが、ユーザビリティを考えるうえで絶対悪と思われがちの Friction を、6つの状況に分けて解説し、必ずしもそれは悪ではないことをいっしょに見ていきました。
- BAD FRICTION/フローがスタックしてしまうこと
- UNSEEN FRICTION/フローをジャンプすること
- BOUNDARY FRICTION/人とデバイスなどタッチポイント間を継ぐこと
- INTENTIONAL FRICTION/あらかじめ事前に防ぐこと
- LEARNING FRICTION/学んでわかりやすくなること
- EXTERNAL FRICTION/条件や規制をふまえること
道を塞ぐような工事現場を例に、航空チケットの予約手続きの途中に「やり直し」ボタンが出現したこと、SNS でリンク先を開くと認証画面が出ることなどがあげられました。また、入力手段をタイピングではなくスキャンやメッセでしてしまうことで、フリクションをなくした例などを紹介いただきました。
とくに、UX Days Tokyo 2015 に登壇した Josh Clark の「MIND THE GAP」でも取り上げられた、デバイスをまたぐような技術は最近増えてきていており文字通り「魔法のような」感想を持ちます。ジャーニーにおけるタッチポイント間の「継ぎ目を継ぐこと」の重要さを理解できました。
Designed to Learn/正しいMVPと顧客の学習
「Product Institute」という Product Management School を設立している Melissa Perri からは、本人が過去の経験から気づいたユーザー理解の重要性と MVP についてお話しいただきました。
Pixar CEO の Ed Catmull 氏の言葉「My own belief is that you should be running experiments,many of which will not lead anywhere.If we knew how this was going to end up,we’d just go ahead and do it.」を引用して「Experiment/実験」の重要さを解いてくれました。
- アジャイル開発やリーン開発で言われている「Minimun Viable Product (MVP)」の本質は、ユーザーを理解するところにある。
- 問題を追求することに時間をかけすぎないで、早く実験すること。
- 小さな実験(ウェブ上でのアンケートなど)をしたことで、本当にユーザーがほしいものがわかった実例。
- 「Problem-Solution Fit/問題解決を考える」から「Product-Market Fit/製品マーケットを考える」という順番で考えること。
- 大きな課題を解決することは、ビジネスの価値をつくることにつながる。
- (余計な解釈が増えるため)あえて「MVP」と言わないようにする。
- 製品戦略は、実験からしか生まれない。
Designing conversations/対話型UIの設計
Giles Colborne は、英国のデジタルコンサルティングファームの cxparners の共同創設者です。今回は、Amazon Echo に代表される音声認識など次世代ユーザーインターフェースにおける陥りがちな問題とその考察をお聞きすることができました。
旧デスクトップパソコンを思い通りにならず破壊する映像からスタートしましたが、あらゆる情報をこの小さな画面に収めようとしていた時代から、より人間の直感に近づいていることがわかります。今回は、AI ※や 音声による会話の難しさをいくつかのポイントで説明いただきました。
- 音声入力はしやすい場所や環境により制約を受けやすい(自宅・車・駅・オフィスの順)
- 会話の始まり方を「STAR TREK」のワンシーンから解説。
- 会話の続きを理解するには「コンテクストを理解していること」が前提となる。
- 会話に必要なスコープ(範囲)の設定も重要。
- 言語は間違いが起こりやすく、同じ音はさらに難しい。
- Google Home のランプや絵文字などの非言語で感情を表す場合がある。
- 時間やエラー、シグナルを読み取って答えなければいけない。
- 顔の動きで感情をパターン化したように思考にもパターンがあること。
- 感情をつくることが、エクスペリエンスデザイナーだ。
※AI とは Artificial Intelligence の略で人工知能を指す。
休憩時間
司会の土岡さんとも直接お話しができ、休憩中にブースを出している企業をいくつか回ることができました。はじめてお会いする方とも情報交換ができる点はイベント参加のメリットですね。今回もいろいろと収穫がありました。
リクルートライフスタイルの鹿毛さんとは面識こそなかったのですがはじめてお話しできたこと、アジケの梅本さんと取り組まれていることについてお聞きできたこと、Sansan の大海さん・後ノ上さんには、彼女らのサービス「Eight」をきちんと紹介いただき、実際に試してその場でつながることができたこと。安藤さんや大谷さんらとも再会できてうれしかったです。
UXのイベントに出展している時点で、なにがしか(自分たちとも)共通項があるとは思っていましたが、実際にお話しすることでその理解が深まりました。
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まとめ
今回聞いた3テーマは、いずれも「UX」が関係しているとは言え、ものづくりから見た場合の人間の理解と、理解することで実現できるリアルの話に尽きていたように思います。どうしても「UXデザイン」の文脈で聞いてしまうと、プロセスやナレッジというところに頭がいきがちですが、不確実性の高い未来に対して向き合う処方箋をいくつか見せていただいたような気がします。
単純に、これまでの話というよりもこれから起こる未来に対しての準備とでも言いましょうか。そうした観点をイベント全体(といっても午後だけですが)を通して体験することができたと思います。参加者のイベントレポートはまだあまり見れていませんが、だいたい同じような感想を持ったのではないかと思います。
最後に、グラレコではないですがスタッフとして参加されていた could のヤスヒサさんが描いたスケッチノートが見事なので紹介します。